時節柄 休業手当(休業補償)を考える ー不可抗力とは 

 労働基準法26条は、使用者の責めに帰すべき事由によって労働者が就業できなかった場合には、その期間中、使用者は労働者に対し、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払うことを規定し、もって労働者の生活を保護しようとしています。
 この「使用者の責めに帰すべき事由」とは、幅広く解釈されており、経営者として、不可抗力を主張しえない一切の場合を含有するものと解釈されています。
 そこで、この不可抗力を主張できる場合とは、つまり、休業手当を支払わなくてもよい場合とは、どのような場合でしょうか。
 この場合の不可抗力とは、第一に、その原因が客観的に事業の外部より発生した事故であること。第二に事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの二要件を備えたものでなければならないとされています。
 現在、新型コロナウイルス感染が社会問題となっていますが、そのことによる経済的損失を誰が負担すべきかは問題となりつつあります。小さなロックバンドが計画したコンサートを中止したところ、1000万円の損失がでた。これをそのままかぶったら大変なことになると嘆いていました。
 あるお店や事業所を閉鎖した場合、「通常の経営者としての最大の注意」を尽くしていたかは当然のこととしても、「事業の外部より発生」という点も難しい問題があり、不可抗力であると認められる場合は限られるようです。
 やはり、政府が音頭をとって経済的な負担についても、積極策をとっていただきたいものです。

既に約半数の企業が「同一労働・同一賃金」の対応に着手 マイナビ調査結果

 株式会社マイナビ(本社・東京都千代田区)は、人材採用に関して決裁権をもつ採用担当者(2.077名)を対象とした、「マイナビ 人材ニーズ調査」を1月23日発表しました。
 2019年度の採用実績について、最も高い割合で実施されたのは「中途採用(77.3%)」とされました。2020年の採用予定に関しても「中途採用(81.1%)」が最も高いものとなりました。また、全雇用形態で2019年の採用実績よりも2020年の採用予定の割合が高く、人材採用に意欲的な企業が多いことが伺えます。
 2020年4月に適用される「同一労働・同一賃金」について2019年末時点での対応状況を聞くと、約半数にあたる50.5%がなんらかの対応を実施していると回答しました。
「すでに対応済み」が15.8%、「一部対応済みで、現在準備を進めているところ」が34.7%です。この部分は上場企業と非上場企業では大きく差があり、企業規模や制度に対応する部署のマンパワーによってバラつきがみられるようです。
 採用目標達成のために基本給を上げた企業の割合についても、全雇用形態で上昇しており、特に派遣社員の上昇が顕著(前年比17.5%増)であり、人材確保のために基本給を上げることに加え、「同一労働・同一賃金」への対応が、派遣社員の勤務開始時時給の上昇に影響していることが推測されています。

未払い残業代の時効 2年から3年に延長 将来5年 厚生労働省

 最近、セブンイレブンの未払い残業代問題が発覚し大きな話題になりましたが、未払い賃金の時効がどうなるのかが注目されていました。現在の民法の規定では1年で時効とされていますが、労働者保護の観点から特別法である労働基準法では2年とされており、こちらが適用されていました。ところが民法が改正され、金銭債権は来年の4月からは一律に5年の時効となったところから、労基法の2年がどうなるか注目されていました。
 厚生労働省は労働政策審議会で検討を進めてきましたが、この度、当面3年で運用(条文上は5年とされる予定)することで合意をしたと発表しました。年初の1月に法改正がなされ、来年の4月1日以降支払われる賃金が対象となる予定です。したがって従来の2年時効を超え、3年時効が適用さるのは2022年4月以降となる予定です。どちらにしましても、未払い賃金が出ないようにしっかり対応していく必要があることに変わりはありません。しっかりとした社会保険労務士(事務所)にリーガルチェックを依頼することをお勧めします。

最低賃金が改訂されました。東京・神奈川は千円超え、御社は大丈夫?

 地域別の最低賃金が全国一斉に改訂されました。時間あたりの最低賃金が東京で1.013円(10月1日)、神奈川は1.011円(10月1日)となりました。労働組合の連合が10月に実施した「連合相談ダイヤル」では、最低賃金に関する相談(73件・6.8%)が1年ぶりに5位以内に入ったそうです。やはり最低賃金に対する関心が高まったのでしょう。最低賃金は時給者だけでなく、月給者・日給者も当然対象となり、1時間当たりの賃金額で判断されますのでご注意ください。

 例えば月給20万円だから大丈夫でしょう?と言われても、よく聞くと基本給16万円、固定残業代4万円などという例があります。そうすると16万円が最低賃金を上回っているかで判断されます。月の所定労働時間数が170時間だとすると、16万円÷170時間で、1時間あたりは約941円となり、東京、神奈川、大阪(964円)などでは最低賃金法違反となります。遅延損害金なども請求されると思わぬ金額になることもありますので、この際見直してみたらいかがでしょうか。

 

 

フレックスタイム制の導入企業割合は40%超  経団連調査結果

 経団連は9月17日、「2019年労働時間等実態調査」集計結果を発表しました。平均時間外労働(年間)は、2016年の237時間から2018年は223時間と減少傾向にあります。弾力的な労働時間制度の活用状況では、出勤・退勤の時間を従業員に委ねるフレックスタイム制を導入している企業の割合が40%を超えているそうです。

 この40%を超える企業がフレックスタイム制を導入しているということに驚いた方も多いかとおもいます。同制度は、一部の事業所でも、ある部門だけでも導入が可能であり、調査対象企業の40%の従業員がフレックスタイム制のもとで働いているわけではありませんが、従業員にとっては働きやすい制度であり、今後も導入する企業は増えていくとおもわれます。

 とくに子育て世代にとっては、とてもありがたい制度であり、御社も導入を考えてはいかがでしょうか。

2019年・年金財政検証結果 厚生年金適用拡大の見通しは?

 5年に一度の年金財政検証結果が公表されました。それによりますと、少子高齢化が進行するなかで、経済状況(経済成長率)により結果が変化しますが、いづれにせよ現状では厳しい結果が示されました。そのなかで対応策の一つとしていつも浮上するのが「被用者保険の適用拡大」という項目です。

 厚生年金には、現在4.480万人が加入しています。内訳はフルタイムの被保険者(いわゆる社員=週30時間以上勤務)が4.400万人、週20時間以上30時間未満の被保険者が40万人です。この週20時間以上30時間未満の被保険者とは、企業規模が501人以上の大企業で、かつ給与が月8.8万円以上の方が対象となっています。

 この対象(週20時間以上・月8.8万円)を企業規模501人未満(つまり中小企業)にも広げると①新たに125万人が厚生年金に加入することとなります。さらに②給与が8.8万円以下の方も含めると325万人が厚生年金に加入し保険料を会社と折半で支払うこととなります。

 年金財政がひっ迫するなかで、①、②と順次拡大されていくことが予想されます。年金を受け取る側からみると、厚生年金に加入することは年金額が増え、基本的に歓迎する方が多いと思われますが、中小企業の場合、保険料の負担がのしかかることとなることも考えていかなければなりません。

パワハラ防止対策の法制化 ー改正労働施策総合推進法が成立

 5月29日、職場でのパワハラを防止するために、企業に相談窓口設置などの防止策を義務付ける改正労働施策総合推進法が成立しました。

 パワハラの定義については同法の30条の2第1項で、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」と定められました。

 企業は、パワハラについて、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならなくなります。また、企業はパワハラの相談をした労働者に対して、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならず、パワハラについての研修をするように努めなければなりません。

 法の施行は1年以内に、まず大企業、3年後には中小企業も対象となる予定です。

 

 

労働相談 パワハラ・いやがらせが最多、年次有給休暇についても増加傾向

 労働組合の連合は、6月20日「なんでも労働相談ダイヤル」2019年5月分の集計結果を発表しました。それによりますと、全体で1.364件の相談が寄せられ、前年同月の1.117件を200件以上上まわりました。相談者の年代では40代、50代が全体の半数以上を占め、また、雇用形態では正社員が676件、49.6%を占めていることと合わせて考えますと、中堅・ベテラン社員からの相談が多いとみることができます。

 業種別では医療・福祉が1位で187件・20.6%、ついでサービス業が164件・18.1%でした。内容別では、パワハラ・嫌がらせが175件・12.5%と昨年に続いて1位ですが、働き方改革との関連か、年次有給休暇に関する相談が100件・7.3%(4位)と増えています。

 年次有給休暇に関しては法令の定めもきちんとしており、トラブルになった場合は事業主が法令違反を問われるケースが多いように感じます。そうなる前に手を打っておいてはいかがでしょうか。

 

時間外労働の上限規制スタート ―社会福祉法人等はご注意ください

 働き方改革関連法が、本年4月1日よりスタートしました。時間外労働の上限規制もそのひとつです。従来は労使間で、いわゆる「36協定」を締結し、特別条項を設ければ上限なく時間外労働が可能となっていました。今回の改定では、時間外労働の限度を法律で定め、罰則による強制力をもたせるとともに、労使が合意しても超えることができない上限が設けられました。

 具体的には、時間外労働については、原則月45時間かつ年360時間までと法律に明記した上で、労使が合意した場合でも上回ることができない上限を年720時間とし、その範囲内において、単月で100時間未満、複数月の平均で80時間以内(休日労働を含む)、月45時間を超えることができる回数は、1年について6月以内に限る、とされました。これらに違反する場合は罰則(30万円以下の罰金又は6カ月以下の懲役)の対象となりす。

 これらの内容は、大企業については本年4月1日から施行されていますが、中小企業については1年間の猶予があり、来年4月1日施行となります。しかし、中小企業かどうかわかりにくい面もあります。例えばサービス業では、資本金5千万円以下または100人以下の企業は中小企業とされていますが、社会福祉法人や医療法人など資本金のない業種であれば、従業員数のみで判定されます。これらの業種では101人いれば大企業であり、すでに改正部分も適用されていることになります。ご注意ください。

‘’平成最後‘’の新入社員意識調査 ―転職は「パワハラ・セクハラ」

 一般社団法人日本能率協会(JMA)は、新入社員向け公開教育セミナーの参加者を対象に、仕事や働くことに対しどのような意識をもっているか調査を行い公表しました。

 それによりますと、平成から令和に元号が変わることに対し、不安・期待・どちらともいえないを聞くと、どちらともいえないが約4割を占め、今の気持ちをあらわす漢字として、「不」が増加しているそうです。変化の激しい時代における不安の表れかとされています。

 仕事をしていく上で不安に感じていることとしては、「仕事での失敗やミス」と「上司・同僚など職場の人とうまくやっていけるか」が同率でトップとのこと。意欲はあるが、失敗を恐れる傾向が見られるとされています。

 転職を考えるシチュエーションは、「パワハラやセクハラにあたったとき」が断トツだそうです。女性に限ると8割がそう答えたそうです。働き方・職場環境に、より一層目を配る必要がありそうです。