1~3月期の景況判断、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「下降」超  

 内閣府と財務省は3月12日、第60回「法人企業景気予測調査」(2019年1~3月期調査)結果を公表しました。それによりますと、「貴社の景況判断」BSIを全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「下降」超となりました。ただし、先行きを全産業でみると、大企業、中堅企業は、2019年7~9月期に「上昇」超に転じる見通しですが、中小企業は「下降」超で推移する見通しとなっています。

 「国内の景況判断」BSIを全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「下降」超となっているそうですが、先行きを全産業でみると、大企業は2019年4~6月期に「上昇」超に転じ、中堅企業は7月~9月期に「上昇」超に転じる見通しですが、中小企業は「下降」超で推移する見通しとなっています。

 どちらにしましても、中小企業にとっては、きびしい景気予測がされているようです。一方で、雇用に対しては、現況についても先行きについても、企業規模にかかわらず「不足気味」超で推移すると予測されています。

 

働き方改革関連  要注意!36協定締結時の過半数代表者の選出方法

 働き方改革関連法は、一部を除き今年4月から施行されます。労働者に残業(法定時間外労働)させる場合、いわゆる36協定(サブロクキョウテイ=労基法36条に基づく協定)を労働基準監督署に提出しなければなりません。この協定を結ぶためには労働者の過半数を代表する者を選出(過半数を代表する労働組合があればその組合)しなければなりませんが、その選出にあたっては、次の点が要件となります。

 ①管理監督者でないこと、②36協定を締結する者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者、③使用者の意向に基づき選出された者ではないこと、の3点です。

 この中でも①は従来もあまりないとおもいますが、小規模事業所などでは②の例は、たまに見かけます。「36協定を締結する者を選出することを明らかにして」という部分に注意してください。また③の例ですが、使用者とは社長のみとは限りませんのでご注意ください。これらに違反すると、36協定は有効とはなりません。

働き方改革関連 年次有給休暇について(年休管理簿)

 ある研究所の事業所向けアンケートを見ますと、「年休5日時季指定付与義務化への対応準備はすすんでいますか?」とありました。最近受けた質問で、「年休について5日は計画年休として会社が時季を指定しなければならないそうですが、女性従業員から自由にとりたいといわれているのですが・・・」というのがありました。確かに「年休5日時季指定付与義務化」と表現されると、そういう質問もありそうですね。しかし、今回の法改正では労働者の年休取得を推進することが本来の目的です。どんなに忙しくても年5日以上の年休を取得してもらうことです。したがって年5日以上年休を取得している労働者に対しては「時季指定」を行う必要(義務)はありません。普通に年次有給休暇をとってもらえばいいわけです。

 ちなみに、労働者ごとに年休管理簿を作成し3年間保存義務が始まるのも本年4月1日からです。こちらのほうが大変な事務となるようにおもいますが、冒頭のアンケートの回答では、「対応のために必要な準備を検討している段階」というのが38%だそうです。あと2カ月でスタートですが、3分の2の事業所は手つかずのようです。

働き方改革関連  年次有給休暇取得義務について

 働き方改革の目玉のひとつに年次有給休暇の取得義務化があります。来年の4月1日スタートですので、それほど時間はありません。大企業の問題だとお考えの向きもありますが、この法律はすべての規模の企業が対象となります。

 まず、5日以上の取得が義務化されるのは、年10日以上の年休が付与される従業員が対象です。この「10日以上」には繰り越される年休は含まれず、新たに10日以上付与される方が対象です。逆にいいますと、社員だけでなくパートさんでも10日以上年休が付与される方が対象となりますので、ご注意ください。

 最近「うちの就業規則では、夏休みが5日あるのですが、この夏休みを労働日にして、会社からこの時季を指定して年休をとらせることはできますか?」という質問を受けました。しかし、これは就業規則の不利益変更ですので、従業員の真の同意がない限り(形式的な同意でなく)、変更した就業規則の効力は認められないと考えられます。このようなやり方では従業員のおおきな反発を招きかねません。

 なお、「5日以上」の取得義務については、繰り越し分を消化してもカウントされるようです。細かなQ&Aも厚労省から出るようですので、ご検討ください。

働き方改革関連  産業医への報告制度がはじまります

 働き方改革の一環として産業医・産業保健機能の強化があげられています。来年の4月1日から産業医専任義務のある事業所(労働者数50人以上の事業所)では、毎月80時間以上の残業を行っている従業員の氏名、残業時間、健康管理のために実施した措置(実施しなかった場合はその理由)等を産業医に通知しなければなりません。

 注目すべきは、この新制度は管理監督者にも適用されることです。管理監督者は本来労働時間の規制は適用されないのですが、健康維持・管理のため、管理監督者の長時間労働も対象とするとしたようです。これらの義務を果たしていない中で、従業員が長時間労働が原因と考えられる病気等になった場合、会社の責任も問われやすくなりますので要注意です。

 月80時間以上の残業を行った従業員に労働時間を通知する制度も始まります。こちらの制度は従業員が1名であっても通知をしなければならないとされています。従業員が申し出た場合、会社は医師と面談させる義務があります。具体的な方式はこれからのようですが、じわりじわりと働き方改革がすすめられるようです。

 

就職活動 企業と学生の接点 インターンシップは「早期化」と「多様化」

 株式会社マイナビは、2019年卒業予定の学生を対象とする、企業の採用活動と学生の就職活動状況および今後の展望をまとめ発表しました。

 それによりますと、内々定率は5月末ではじめて6割を超え、6月末時点で2社以上の内々定を保有している学生は全体の45.2%となったそうです。企業は内々定辞退への対策や対応にせまられ、対策を開始する時期を「早める」と回答した企業は28.6%と前年を上回わりました。

 学生のインターンシップ参加率は78.7%。企業の実施率は48.6%に達しています。また、企業は「キャリア授業への協力」「社内・工場見学」「OB・OG訪問の受け入れ」や、「産学連携プロジェクト・ビジネスコンテスト」の実施など、インターンシップ以外の活動も広がりを見せており、企業と学生の接点は「早期化」に加えて、「多様化」しているとされています。

10月は「年次有給休暇取得促進月間」、御社での年休取得は?

 厚生労働省では、毎年10月を「年次有給休暇取得促進月間」と定めて、土日・祝日と年休をつなげる「プラスワン休暇」の取得や計画的付与制度の活用を働きかけています。皆様の事業所での年休取得の状況はいかがでしょうか。

 さきに成立した働き方改革関連法を先取りした形で、連続した5日間を有給取得すると、その従業員に5万円を支給するとした会社も現れております。年休取得率の全国平均は50%弱です。来年4月からの付与義務付けも始まりますが、従業員のモチベーションアップ、人材定着率向上をめざして、そろそろ準備をはじめてはいかがでしょうか。

働き方改革を推進するための関係法律 労働政策審議会での省令案の審議開始

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」は6月29日に参議院本会議で可決・成立し、7月6日に公布されました。実際の施行は平成31年4月1日からですが、法の公布を受けて厚生労働省では労働政策審議会労働条件分科会を開催し、委任事項を具体的に定める省令案を検討はじめました。時間外労働の規制等(36協定など)、年次有給休暇の付与義務など具体案の検討がすすんでいる分野もありますが、高度プロフェッショナル制度など本格な具体化はこれからでしょうか。

 9月になりますと各地で「働き方改革推進セミナー」が目白押しのようです。やはり最終的な省令が出そろわないと、全体を判断するには早計となりそうです。例えば同一労働同一賃金についても、6月1日の最高裁判決(長澤運輸事件・ハマキョウレックス事件)をうけてガイドラインの見直しも必要になるとおもいます。

都内各地でテレワーク体験セミナーを開催 / 東京都

 働き方改革の推進のためにテレワークを導入し、労働時間の削減やワーク・ライフ・バランスの向上などに役立てている企業がある一方、テレワークをめぐっては労働時間の管理や社内コミュニケーションの機会の減少などの課題も指摘されています。

 そんななかで、東京都はテレワークの導入を検討している中堅・中小企業等を対象に機器の操作通じて導入メリットを学ぶ「体験セミナー」を都内各地開催するそうです。テレワーク勤務の1日の流れを例にとり、様々なテレワークツールを利用・体験できるそうです。参加費は無料とのこと。案ずるより産むが易しということもあるかもしれません。

 

 

定年後再雇用者の賃金格差訴訟で最高裁判決  長澤運輸事件等

 定年後再雇用された労働者が、同じ仕事で責任等も変わらないのに賃金だけ低下するのは労働契約法20条に違反すると会社を訴えた事件で、最高裁が判決を言い渡しました。判決では労働契約法20条の「その他の事情」を幅広く解釈し、定年後再雇用者については一定程度の賃金(基本給等)の低下や賞与不支給は違法ではないとしました。しかし、各種の手当については手当の項目ごとに判断し、精勤手当については、その性質上、再雇用者だから支給しないことは不合理であり違法だと判断しました。

 定年後再雇用者については、仕事の内容や責任の範囲が変わらなくとも、賃金を定年前の60%程度にしている企業が多いことから、この判決の内容によっては大きな改革を迫られる可能性があったことから、大変注目されていました。ひとまずはほっとされた経営者も多いのではないでしょうか。

 ただ、注意しておかなければならないのは、長澤運輸の場合、賃金の低下といってもおおむね80%を維持しており、60代前半の老齢厚生年金の支給時期にあわせて、年金が支給されるまでは別手当を追加支給するなど、細かな対応を会社がしてきたことも判決に影響したのではないかと考えます。各種手当については、直ちに確認し、必要なら是正することが必要とおもわれます。