定年後再雇用後の基本給6割以下は「違法」 自動車学校に賠償命令

 名古屋自動車学校で嘱託社員だった元教習指導員が、正社員との待遇格差の是正を求めた訴訟で、名古屋地裁は10月28日、「基本給が定年退職時の60%を下回るのは不合理で違法だ」として、自動車学校に約625万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。判決では定年退職時と嘱託時の職務内容に違いがなかったと認定しています。
 旧労働契約法20条をめぐる争いでは2年ほど前の長澤運輸事件の最高裁判決が有名ですが、このときは、定年後再雇用は考慮すべき「その他の事情」にあたり、正規と非正規(期間雇用)との差は不合理とはいえないとされました。この事例では社員給与の8割以上が支払われていた事例であり、その他の事情も含めて個別の案件の判断だとされましたが、それではいくら下げてもいいのかという疑問には答えていませんでした。
 今回の判例は地裁での判断ではあるものの、6割以下は不合理であり違法とした点に意義があります。賞与についても同様の判断をしています。同一労働同一賃金が言われている中「60%という数字は一つの基準になるだろう」(水町勇一郎東大教授)という声もあります。職務内容がまったく同じで再雇用するときは参考にすべきとおもわれます。

外国人労働者数が過去最高を更新

厚生労働省から「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和5年10月末現在)」が公表されました(令和6年1月26日公表)。
外国人雇用状況の届出制度は、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援などを目的とし、すべての事業主に、外国人の雇入れ・離職時に氏名、在留資格、在留期間などを確認し、ハローワークへ届け出ることを義務付けるものです。
届出の対象は、事業主に雇用される外国人労働者(特別永住者、在留資格「外交」・「公用」の者を除く。)であり、今回公表された数値は、令和5年10月末時点での事業主からの届出件数を集計したものです。
主なポイントは、下記のとおりです。
・外国人労働者数は204万8,675人で、前年比22万5,950人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新。対前年増加率は12.4%。昨年の対前年増加率5.5%から6.9ポイント上昇。
・外国人を雇用する事業所数は31万8,775所で、前年比19,985所増加し、届出義務化以降、過去最高を更新。対前年増加率は6.7%。昨年の対前年増加率4.8%から1.9ポイント上昇。
・国籍別では、ベトナムが最も多く51万8,364人(外国人労働者数全体の25.3%)。
・在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が対前年増加率として最も大きく59万5,904人、前年比11万5,955人(24.2%)増加。

技能実習制度に代わる新制度の方向性を示す最終報告書が法務大臣に提出されました。

技能実習制度及び特定技能制度の施行状況を検証し、課題を洗い出した上、外国人材を適正に受け入れる方策を検討し、外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議に対して意見を述べることを目的として、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が開催され、令和4年12月から16回にわたり議論が重ねられてきました。
この度、これまでの議論を踏まえた最終報告書が取りまとめられ、令和5年11月30日、関係閣僚会議の共同議長である法務大臣に提出されました。
最終報告書では、次のような「見直しに当たっての4つの方向性」を示しています。
1.技能実習制度を、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度とするなど、実態に即した見直しをすること
2.外国人材に日本が選ばれるよう、技能・知識を段階的に向上させその結果を客観的に確認できる仕組みを設けることでキャリアパスを明確化し、新たな制度から特定技能への円滑な移行を図ること
3.人権保護の観点から、一定要件の下で本人意向の転籍を認めるとともに、監理団体等の要件厳格化や関係機関の役割の明確化等の措置を講じること
4.日本語能力を段階的に向上させる仕組みの構築や受入れ環境整備の取り組みにより、共生社会の実現を目指すこと

その上で、具体的な提言が行われています。
たとえば、「新制度での転籍の在り方」として、次のような内容が示されています。
・「やむを得ない場合」の転籍の範囲を拡大・明確化し、手続きを柔軟化
・これに加え、以下を条件に「本人の意向による転籍」も認める。
………計画的な人材育成等の観点から、一定要件(同一機関での就労が1年超/技能検定試験基礎級・日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格/転籍先機関の適正性(転籍者数等))を設け、同一業務区分に限る。

なお、新制度の名称については、「育成就労制度」とする案があり、おおむね賛同が得られたということです。
政府は、この最終報告書を踏まえて、関係閣僚会議においてさらに検討し、関連法案を来年の通常国会に提出することを目指しているということです。

労働争議の件数 過去2番目に低い水準(厚労省調査)

厚生労働省から、「令和4年 労働争議統計調査の概況」が公表されました(令和5年8月23日公表)。

この調査は、我が国における労働争議(労働組合や労働者の団体とその相手方との間で生じた紛争)について、その発生状況、争議行為の形態や参加人員、要求事項などを調査し、その実態を明らかにすることを目的としています。

令和4年の調査結果のポイントは、次のとおりです。
・労働争議の種類別の状況
令和4年の「総争議」の件数は270件(令和3年297件)で、令和元年に次いで過去2番目に低く、減少傾向です。

・労働争議の主要要求事項の状況
争議の主な要求事項(複数回答。主要要求事項を2つまで集計)は、「賃金」に関するもの139件(同150件)で、総争議件数の51.5%と最も多く、次いで「組合保障及び労働協約」に関するもの103件(同137件)、「経営・雇用・人事」に関するもの98件(同96件)でした。

・労働争議の解決状況
令和4年中に解決した労働争議は206件(同223件)で、総争議件数の76.3%でした。
そのうち「労使直接交渉による解決」は54件(同63件)、「第三者関与による解決」は68件(同77件)でした。

労働組合や組合員の数自体が減少傾向にあることから、労働争議も減少傾向にあるようです。

令和5年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果を公表 賃上げ率は3%(経団連)

経団連(日本経済団体連合会)から、「2023年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(加重平均)」の最終集計が公表されました(令和5年8月10日公表)。

この調査は、地方別経済団体の協力により、従業員数500人未満の17業種754社を対象に実施。そのうち、集計可能な367社の結果をまとめたものとなっています。

中小企業といっても、ある程度の規模の企業が調査対象となっていますが、これによると、定期昇給を含む賃金の引上げ額は、平均で8,012円(前年の同調査5,036円)、賃上げ率は3.00%(前年の同調査1.92%)でした。昨年よりも額・率ともに大幅に増加しました。

しかし、先に公表された「2023年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)」の最終集計(引き上げ額13,362円、賃上げ率は3.99%)と比べると、賃上げ率でも1%近い差があります。

いわゆるフリーランス新法が成立 フリーランスの保護強化

令和5年4月28日の参議院本会議で、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス新法)が可決・成立しました。

この法律は、働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的とし、特定業務委託事業者(発注事業者)及び特定受託事業者(フリーランス)の取引について、特定業務委託事業者において、書面等での契約内容の明示、報酬の60日以内の支払い、募集情報の的確な表示、ハラスメント対策などの措置を講じることとするものです。

施行期日は、「公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

この法律などに関する厚生労働省の専用ページはこちらです。
<フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html

就活ハラスメントに関する情報ページが公開されました。

職場における総合的なハラスメント対策のポータルサイト「あかるい職場応援団」に、学生の皆様と企業の皆様へ向けた就活ハラスメントに関する情報のページが設けられました。(令和5年3月20日公表)

企業の皆様に向けた情報としては、「就活ハラスメント防止対策企業事例集」などが紹介されています。詳しくはこちらをご覧ください。

<学生の皆様と企業の皆様へ向けた就活ハラスメントに関する情報のページを公開しました>
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/syukatsu hara index

「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」が公開されました。

厚生労働省が、「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」を公開しました。(令和5年2月1日公表)
トラックやタクシーなどのドライバーは、物流や生活を支える、なくてはならない存在です。
一方で、こうしたドライバーの方々は、業務の特性や取引上の慣行などから、長時間労働となることが多く、ドライバーの健康と安全を守る働き方改革が急務とされています。
そのため、厚労省では、既存のポータルサイトを大幅にリニューアルしました。
令和6年4月からの自動車運転者への時間外労働の上限規制の適用に向けて、運送事業者の皆さまの働き方改革に役立つ様々な情報に加え、関係企業の方や国民の皆さまに役立つ情報を発信していく、ということです。

新型コロナ対策 屋外ではマスクの着用は原則不要 屋内では?(厚労省からお知らせ)

新型コロナの感染拡大防止のため、マスクの着用が当たり前になっていますが、これを不要とするタイミングが模索されています。
様々な意見があると思いますが、この度、改めて、厚生労働省から、マスクの着用についてお知らせがありました。

現時点では、次のように、場面に応じた適切な脱着を呼び掛けています。
・屋外では、季節を問わず、マスクの着用は原則不要です。・・・人との距離(目安2m)が保てず、会話をする場合は着用をお願いします。
・屋内では、距離が確保でき、会話をほとんど行わない場合を除き、マスクの着用をお願いします。・・・人との距離(目安2m)が保てて、会話をほとんど行わない場合は着用の必要はありません。

各々で判断できることだとは思いますが、職場での対応において参考になるかもしれませんね。

女性の平均給与が初めて300万円台に しかし男女格差は依然大きい(国税庁の調査)

令和4年9月28日、国税庁から、「令和3年分 民間給与実態統計調査結果について」が公表されました。
「民間給与実態統計」は、統計法に基づく基幹統計の一つです。
民間の事業所における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等に明らかにし、併せて、租税収入の見積もり、租税負担の検討及び税務行政運営等の基本資料とすることを目的としたもので、その作成のための調査は毎年実施されています。

令和3年分の調査結果のポイントは、次のとおりです。

令和3年12月31日現在の給与所得者数は、5,931万人。
令和3年中に民間の事業所が支払った給与総額は225兆4,195億円で、源泉徴収された所得税額は11兆1,870億円(給与総額に占める税額の割合は4.96%)。

1年を通じて勤務した給与所得者について
・給与所得者数は、5,270万人(対前年比0.5%増、25万人の増加)で、その平均給与は443万円(同2.4%増、102千円の増加)。
・男女別にみると、給与所得者数は、男性3,061万人(同0.5%減、16万人の減少)、女性2,209万人(同1.9%増、41万人の増加)。

平均給与は、男性545万円(同2.5%増、131千円の増加)、女性302万円(同3.2%増、94千円の増加)。

女性の平均給与は過去最高の302万円となり、初めて300万円台に乗りましたが、男性の55%程度にとどまり、依然として男女格差が大きい状況です。

賃金不払残業に関する監督指導 令和3年度の是正企業数は1,069企業(前年度比7企業の増)

厚生労働省から、「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」が公表されました。(令和4年8月30日公表)。

この是正結果の公表は、平成14年度から毎年度行われているものです。
今回公表されたのは、労働基準監督署が監督指導を行った結果、令和3年度に、不払となっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。

<令和3年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント>
・是正企業数:1,069企業(前年度比7企業の増) そのうち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、115企業(同3企業の増)
・対象労働者数:6万4,968人(同427人の減)
・支払われた割増賃金合計額:65億781万円(同4億7,833円の減)
・支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり609万円(同49万円の減)、労働者1人当たり10万円(同1万円の減)

監督指導を受けて支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり609万円ということですが、簡単に支払える金額ではありませんね。

令和2年4月施行の改正で、労働基準法における賃金の消滅時効の期間が、「2年」から「3年(当分の間)」に延長されたこともありますので、日頃から、労働時間は適正に把握しておく必要がありますね。
なお、監督指導の対象となった企業においては、賃金不払残業の解消のために様々な取組が行われていますが、それをまとめた取組事例も厚労省のHPで公表されています。