名古屋自動車学校で嘱託社員だった元教習指導員が、正社員との待遇格差の是正を求めた訴訟で、名古屋地裁は10月28日、「基本給が定年退職時の60%を下回るのは不合理で違法だ」として、自動車学校に約625万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。判決では定年退職時と嘱託時の職務内容に違いがなかったと認定しています。
旧労働契約法20条をめぐる争いでは2年ほど前の長澤運輸事件の最高裁判決が有名ですが、このときは、定年後再雇用は考慮すべき「その他の事情」にあたり、正規と非正規(期間雇用)との差は不合理とはいえないとされました。この事例では社員給与の8割以上が支払われていた事例であり、その他の事情も含めて個別の案件の判断だとされましたが、それではいくら下げてもいいのかという疑問には答えていませんでした。
今回の判例は地裁での判断ではあるものの、6割以下は不合理であり違法とした点に意義があります。賞与についても同様の判断をしています。同一労働同一賃金が言われている中「60%という数字は一つの基準になるだろう」(水町勇一郎東大教授)という声もあります。職務内容がまったく同じで再雇用するときは参考にすべきとおもわれます。
作者別: 上條・三木事務所
コロナ禍で6割強の企業が最終面接までウェブ面接(経団連調査)
経団連(日本経済団体連合会)から、「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」が公表されました。
この調査は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が新卒採用活動にも及んでいる状況に鑑み、その影響と課題、対応状況等を把握するため、経団連全会員企業を対象にアンケートを実施し、集計したものです。
2020年度(令和2年度)において、新型コロナウイルス感染拡大により、多くの企業で業績の不透明感が増しているものの、ほとんどの企業で新卒採用活動を実施したということです。その際の面接について、9割超の企業がウェブ面接を実施し、6割強の企業が最終面接を含めてすべてウェブを活用したということです。
なお、ウェブ面接を実施した企業のうち、対面の面接より学生の評価が難しいと回答した企業は6割超だったということです。
休業補償を考える ー新型コロナに関連して
新型コロナウイルスの影響は業種により様々です。様々というより、天と地ほど違う場合があります。そんななかで、一部上場企業の社員さんと話す機会がありました。女性社員(ノンバンク・経理)のほうは、もうずーとテレワークで通勤がない分楽ですねと言ってました。男性は飲食業の店長職ですが、会社の方針で、パート・アルバイトを含め、全員全額休業補償をしたと胸を張っていました。
社員は全額補償(通常の給与を支給)、パート・アルバイトは労基法上の補償(1日あたり平均賃金の60%)というところが多いと思いますが、社員も労基法上の補償のみ(月給者の場合、実質40%程度にしかならない)、パート・アルバイトは補償なしというところもいくつか聞きました。この場合、パート・アルバイトについては労基法上の問題がある場合が多いのでお勧めはできません。
業種との関連もあると思いますが、リーマンショック後に売り上げが回復してきたとき、人手の確保に大変な思いをしたということは製造業含めよく聞きました。居酒屋さんの場合、パート・アルバイトに頼る部分多いため、全額補償をしたとのことです。やはり大変な時に、しっかり補償してくれた会社で働きたいと考えるのは普通のことと思います。
時節柄 休業手当(休業補償)を考える ー不可抗力とは
労働基準法26条は、使用者の責めに帰すべき事由によって労働者が就業できなかった場合には、その期間中、使用者は労働者に対し、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払うことを規定し、もって労働者の生活を保護しようとしています。
この「使用者の責めに帰すべき事由」とは、幅広く解釈されており、経営者として、不可抗力を主張しえない一切の場合を含有するものと解釈されています。
そこで、この不可抗力を主張できる場合とは、つまり、休業手当を支払わなくてもよい場合とは、どのような場合でしょうか。
この場合の不可抗力とは、第一に、その原因が客観的に事業の外部より発生した事故であること。第二に事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの二要件を備えたものでなければならないとされています。
現在、新型コロナウイルス感染が社会問題となっていますが、そのことによる経済的損失を誰が負担すべきかは問題となりつつあります。小さなロックバンドが計画したコンサートを中止したところ、1000万円の損失がでた。これをそのままかぶったら大変なことになると嘆いていました。
あるお店や事業所を閉鎖した場合、「通常の経営者としての最大の注意」を尽くしていたかは当然のこととしても、「事業の外部より発生」という点も難しい問題があり、不可抗力であると認められる場合は限られるようです。
やはり、政府が音頭をとって経済的な負担についても、積極策をとっていただきたいものです。
既に約半数の企業が「同一労働・同一賃金」の対応に着手 マイナビ調査結果
株式会社マイナビ(本社・東京都千代田区)は、人材採用に関して決裁権をもつ採用担当者(2.077名)を対象とした、「マイナビ 人材ニーズ調査」を1月23日発表しました。
2019年度の採用実績について、最も高い割合で実施されたのは「中途採用(77.3%)」とされました。2020年の採用予定に関しても「中途採用(81.1%)」が最も高いものとなりました。また、全雇用形態で2019年の採用実績よりも2020年の採用予定の割合が高く、人材採用に意欲的な企業が多いことが伺えます。
2020年4月に適用される「同一労働・同一賃金」について2019年末時点での対応状況を聞くと、約半数にあたる50.5%がなんらかの対応を実施していると回答しました。
「すでに対応済み」が15.8%、「一部対応済みで、現在準備を進めているところ」が34.7%です。この部分は上場企業と非上場企業では大きく差があり、企業規模や制度に対応する部署のマンパワーによってバラつきがみられるようです。
採用目標達成のために基本給を上げた企業の割合についても、全雇用形態で上昇しており、特に派遣社員の上昇が顕著(前年比17.5%増)であり、人材確保のために基本給を上げることに加え、「同一労働・同一賃金」への対応が、派遣社員の勤務開始時時給の上昇に影響していることが推測されています。
未払い残業代の時効 2年から3年に延長 将来5年 厚生労働省
最近、セブンイレブンの未払い残業代問題が発覚し大きな話題になりましたが、未払い賃金の時効がどうなるのかが注目されていました。現在の民法の規定では1年で時効とされていますが、労働者保護の観点から特別法である労働基準法では2年とされており、こちらが適用されていました。ところが民法が改正され、金銭債権は来年の4月からは一律に5年の時効となったところから、労基法の2年がどうなるか注目されていました。
厚生労働省は労働政策審議会で検討を進めてきましたが、この度、当面3年で運用(条文上は5年とされる予定)することで合意をしたと発表しました。年初の1月に法改正がなされ、来年の4月1日以降支払われる賃金が対象となる予定です。したがって従来の2年時効を超え、3年時効が適用さるのは2022年4月以降となる予定です。どちらにしましても、未払い賃金が出ないようにしっかり対応していく必要があることに変わりはありません。しっかりとした社会保険労務士(事務所)にリーガルチェックを依頼することをお勧めします。
最低賃金が改訂されました。東京・神奈川は千円超え、御社は大丈夫?
地域別の最低賃金が全国一斉に改訂されました。時間あたりの最低賃金が東京で1.013円(10月1日)、神奈川は1.011円(10月1日)となりました。労働組合の連合が10月に実施した「連合相談ダイヤル」では、最低賃金に関する相談(73件・6.8%)が1年ぶりに5位以内に入ったそうです。やはり最低賃金に対する関心が高まったのでしょう。最低賃金は時給者だけでなく、月給者・日給者も当然対象となり、1時間当たりの賃金額で判断されますのでご注意ください。
例えば月給20万円だから大丈夫でしょう?と言われても、よく聞くと基本給16万円、固定残業代4万円などという例があります。そうすると16万円が最低賃金を上回っているかで判断されます。月の所定労働時間数が170時間だとすると、16万円÷170時間で、1時間あたりは約941円となり、東京、神奈川、大阪(964円)などでは最低賃金法違反となります。遅延損害金なども請求されると思わぬ金額になることもありますので、この際見直してみたらいかがでしょうか。
フレックスタイム制の導入企業割合は40%超 経団連調査結果
経団連は9月17日、「2019年労働時間等実態調査」集計結果を発表しました。平均時間外労働(年間)は、2016年の237時間から2018年は223時間と減少傾向にあります。弾力的な労働時間制度の活用状況では、出勤・退勤の時間を従業員に委ねるフレックスタイム制を導入している企業の割合が40%を超えているそうです。
この40%を超える企業がフレックスタイム制を導入しているということに驚いた方も多いかとおもいます。同制度は、一部の事業所でも、ある部門だけでも導入が可能であり、調査対象企業の40%の従業員がフレックスタイム制のもとで働いているわけではありませんが、従業員にとっては働きやすい制度であり、今後も導入する企業は増えていくとおもわれます。
とくに子育て世代にとっては、とてもありがたい制度であり、御社も導入を考えてはいかがでしょうか。
2019年・年金財政検証結果 厚生年金適用拡大の見通しは?
5年に一度の年金財政検証結果が公表されました。それによりますと、少子高齢化が進行するなかで、経済状況(経済成長率)により結果が変化しますが、いづれにせよ現状では厳しい結果が示されました。そのなかで対応策の一つとしていつも浮上するのが「被用者保険の適用拡大」という項目です。
厚生年金には、現在4.480万人が加入しています。内訳はフルタイムの被保険者(いわゆる社員=週30時間以上勤務)が4.400万人、週20時間以上30時間未満の被保険者が40万人です。この週20時間以上30時間未満の被保険者とは、企業規模が501人以上の大企業で、かつ給与が月8.8万円以上の方が対象となっています。
この対象(週20時間以上・月8.8万円)を企業規模501人未満(つまり中小企業)にも広げると①新たに125万人が厚生年金に加入することとなります。さらに②給与が8.8万円以下の方も含めると325万人が厚生年金に加入し保険料を会社と折半で支払うこととなります。
年金財政がひっ迫するなかで、①、②と順次拡大されていくことが予想されます。年金を受け取る側からみると、厚生年金に加入することは年金額が増え、基本的に歓迎する方が多いと思われますが、中小企業の場合、保険料の負担がのしかかることとなることも考えていかなければなりません。
パワハラ防止対策の法制化 ー改正労働施策総合推進法が成立
5月29日、職場でのパワハラを防止するために、企業に相談窓口設置などの防止策を義務付ける改正労働施策総合推進法が成立しました。
パワハラの定義については同法の30条の2第1項で、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」と定められました。
企業は、パワハラについて、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならなくなります。また、企業はパワハラの相談をした労働者に対して、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならず、パワハラについての研修をするように努めなければなりません。
法の施行は1年以内に、まず大企業、3年後には中小企業も対象となる予定です。