パナソニック「時間制正社員」導入 介護事業で業界初

 パナソニックの全額出資子会社で介護事業を展開する「パナソニックエイジフリー」(大阪市門真市)は11月22日、1年以上勤務したパートタイマーの介護職員を対象に「時間制正社員制度」を導入すると発表しました。いままでも勤務時間を選択できる制度はありましたが、その部分は変えず、通常の正社員と時間当たりの賃金を同水準にする仕組みです。人手不足が深刻化する中、優秀な人材を確保するのが狙いです。

 いわゆる「短時間正社員」ですが、ヨーロッパ、なかでもオランダなどでは普及している制度ですが、日本では「業界初」といわれています。時間制正社員制度を利用すると、無期雇用契約となり、能力や経験、勤務時間に応じた昇給があるほか、正社員と同じ福利厚生施設を利用でき、退職金も支払われます。現在の正社員が時間制正社員を選択することもできます。

東京労働局 労働基準関係法令違反の現状と司法処理状況をまとめる

 東京労働局は、平成28年の定期監督等の実施結果と平成28年度の司法処理状況をまとめ、公表しました。それによりますと、定期監督等(労働基準監督官が会社に立ち入り検査すること)の件数は9705件となり、前年に比べて834件増加しました。

 法違反の件数と違反率については、労働時間に関するものが最も多く、2433件で、全体の25.1%で違反が見られました。ついで割増賃金(いわゆる残業代)に関するものが2011件みられました。今年7月の最高裁の判決を受けて出された通達では、今後残業代固定払い(あらかじめ定額で残業代を支払うこと)がされている場合、基本給等と区別されてない場合は、指導・監督の対象とするとされましたので、注意が必要です。

 司法処理(検察庁への書類送検)の状況については、合計50件でした。違反事項別では、賃金不払いに関するものが13件と全体の26%を占め最多でした。書類送検はもとより、是正勧告もされることのないよう、日頃の点検・対応が重要になります。

 

厚生労働省 「職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請」を実施

 厚生労働省は、平成29年の労働災害による死亡者数(1~8月の速報値)が対前年比で増加し、とくに8月に急増したことを受け、9月22日、労働災害防止団体や関係事業者団体に対し、職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請をおこないました。20日に公表した本年中の労働災害による死亡者数は、対前年比9.6%(49人)の増加。8月単月でみると、死亡者数は66人、対前年比57.1%と大幅な増加となっています。とくに死亡者が増加している業種としては、建設業、陸上貨物運送業、林業、製造業があげられています。

 労働災害による死亡事故が起きますと、まず、警察による捜査があり、業務上過失致死の疑いがあれば立件(書類送検)されます。また、労働基準監督官による捜査もあり、労働安全衛生法上の違反があれば同様に立件(書類送検)されます。それらを受けた検察官による捜査も1年くらいは続くのが普通です。残された遺族への対応も誤ると大きな問題(損害賠償請求)へと発展することも考えられます。とくに初動対応は大変重要であり、経験のある社会保険労務士に相談することをお勧めします。

      

 

 

なんでも労働相談ダイヤル(連合)では、セクハラ・パワハラが20%と最多

労働組合の連合は21日、「なんでも労働相談ダイヤル」29年6月分の集計結果を発表しました。受付件数は1.845件。相談内容は、セクハラ・パワハラ・嫌がらせが全体の20%を占め最多となりました。ついで「雇用契約・就業規則」が9.2%を占めたそうです。

業種別では、「医療・福祉」が18.7%と最多となりました。「医院長は指示命令には絶対服従の考え方の持ち主で、仕事以外の休憩時間も家政婦のようなことを指示され、・・・意見が言える雰囲気ではなく、言えば恫喝される」などの相談が寄せられたそうです。事業主としては、他山の石としたいものです。

 

最高裁 医師の高額な定額年俸には 「残業代含まず」

残業代込みの医師の定額年俸が有効かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷は「残業代と基本給を区別できない場合は残業代が支払われたとは言えない」として無効と判断し、2審・東京高裁判決の残業代部分を取り消し、未払い残業代を計算させるために審理を同高裁に差し戻しました。

1.2審は、医師の年俸が1700万円と高額な点などから「基本給と区別できないが、残業代も含まれる」としていましたが、最高裁は医師のような高い報酬を得ている専門職でも例外は認められないと、これまでの判例を見直し労基法の原則にもどして判断しました。

約7割の事業所に正社員への登用制度あり。厚生労働省公表

厚生労働省では、このほど、労働経済動向調査(平成29年2月)の結果を取りまとめ、公表しました。今回は特別項目として「正社員以外の労働者から正社員への登用の状況」についても調査項目としました。今回の調査(毎年四半期ごとに調査しています)は、規模30人以上の3.006事業所を対象に行ったものです。

それによりますと、正社員への登用制度がある事業所割合は68%、過去1年間の登用実績をみると50%(登用制度あり事業所41%)の事業所で登用実績がありました。やはり正社員への登用制度ある事業所での実績が目立ちます。

正社員への登用制度は、就業規則等により定めることとなりますが、応募者がでた場合は助成金の対象となる場合があります。当事務所でも複数の事業所さんがこの助成金を活用されています。正社員への登用制度をお考えの会社さんは、一度検討されてはいかがでしょうか。

 

 

外国人実習生受け入れ、239機関に「不正行為」 法務省発表

平成28年に外国人の研修・技能実習の適正な実施を妨げる「不正行為」を行ったと認められる機関は、239機関であったと法務省が発表しました。

「不正行為」の類型は、労働時間や賃金不払い等に係る労働関係法令の違反に関する「不正行為」が134件(35.0%)と最も多く、ついで「不正行為」を隠ぺいする目的で偽変造文書等を行使又は提出したことが94件(24.5%)となっています。

人手不足のおり外国人の研修・技能実習生を受け入れている企業も、建設業・製造業を中心に多いとおもいます。労働法関係の諸法令、中でも労働基準法に規定されている時間外割増賃金(いわゆる残業代)については、正確に理解されている(支払っている)企業は少ないようにおもいます。関係機関より是正・指導を受けたとき、文書を偽変造してのがれようとするのは最悪の対処法です。念のため、労務管理について点検してみてはいかがでしょうか。

2017年賃上げの見通し 定昇込みで6332円と予測 労使および専門家471人

 一般財団法人労務行政研究所では、1974年から毎年、来る賃金交渉の動向を把握するための参考資料として、「賃上げに関するアンケート調査」を労使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に実施しています。この程、2017年の調査結果がまとまったとして2月1日に発表しました。

 それによりますと、全回答者471人の平均で「6332円・2.00%(定期昇給分を含む)」となりました。昨年度をすこし下回るものの、賃上げ率は2%に乗るとの予測です。労使別に平均値を比べると、ほぼ一致したとのことです。また、いわゆるベースアップを実施する予定とした企業は約24%、実施すべきとした労働側の60%と比べると大きく下回りました。

 アンケートは上場企業が対象ですが、人材確保の観点からも、中小企業も参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

労基署の重点監督対象となった事業場の3分の2で労基法などの法令違反

厚生労働省は、1カ月あたり80時間を超える残業が疑われたり、長時間労働による過労死などに関する労災請求があった事業場を対象として、重点的に監督指導した結果、全体の66.2%にあたる6.659事業場で労働基準法などの法令違反があったと1月17日発表しました。

重点監督対象となった事業場の総数は、10.059事業場。このうち違法な時間外・休日労働があったのは4.416事業場(43.9%)、賃金不払い残業があったのが637事業場(6.3%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが1.043事業場(10.4%)でした。

違法な時間外・休日労働があった4.416事業場のうち、1カ月当たり80時間を超えるものが3.450事業場(78%)もありました。脳・心臓疾患の発症前1カ月間におおむね100時間または発症前2カ月ないし6カ月にわたって、1カ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があり、業務上の災害(労災)と認定される可能性がたかくなります。業務上の災害となりますと、事業主の安全配慮義務なども問われることとなり、債務不履行として損害賠償の対象ともなりかねません。ご注意ください。

 

雇用保険の適用拡大、育児・介護休業給付金の要件見直し等がスタート

これまでは、満65歳以上の方を雇い入れた場合、雇用保険に加入させることはできませんでしたが、平成29年1月1日以降は、65歳以上の労働者についても雇用保険の対象者となりました。1週間の所定労働時間が20時間以上、31日以上雇用の見込みがあることが要件です。28年12月末までに雇入れた方(そのとき65歳以上)も、1月1日以降は要件を満たせば雇用保険の被保険者になりますので、届出が必要です。なお、保険料は当面全額免除されています。

育児休業・介護休業給付金の支給要件についても見直しがされています。例えば、介護休業は、これまでは原則1回、93日を限度としていましたが、通算93日分を最大3回まで分割して取得することが可能となりました。現在の給付金(率)は、賃金の67%ですので、なかなか使いがいのある給付金となっているとおもいます。育児休業の場合は社会保険料の免除もありますので、ぜひご活用ください。