定年後再雇用者の賃金格差訴訟で最高裁判決  長澤運輸事件等

 定年後再雇用された労働者が、同じ仕事で責任等も変わらないのに賃金だけ低下するのは労働契約法20条に違反すると会社を訴えた事件で、最高裁が判決を言い渡しました。判決では労働契約法20条の「その他の事情」を幅広く解釈し、定年後再雇用者については一定程度の賃金(基本給等)の低下や賞与不支給は違法ではないとしました。しかし、各種の手当については手当の項目ごとに判断し、精勤手当については、その性質上、再雇用者だから支給しないことは不合理であり違法だと判断しました。

 定年後再雇用者については、仕事の内容や責任の範囲が変わらなくとも、賃金を定年前の60%程度にしている企業が多いことから、この判決の内容によっては大きな改革を迫られる可能性があったことから、大変注目されていました。ひとまずはほっとされた経営者も多いのではないでしょうか。

 ただ、注意しておかなければならないのは、長澤運輸の場合、賃金の低下といってもおおむね80%を維持しており、60代前半の老齢厚生年金の支給時期にあわせて、年金が支給されるまでは別手当を追加支給するなど、細かな対応を会社がしてきたことも判決に影響したのではないかと考えます。各種手当については、直ちに確認し、必要なら是正することが必要とおもわれます。

 

連合・労働相談 内容ではパワハラ・いやがらせが最多、ついで解雇等

 労働組合の連合主催の「なんでも労働相談ダイヤル」に寄せられた労働相談の内容等(2018年4月集計分)が公表されました。それによりますと、相談件数は987件。内容的にはパワハラ・嫌がらせが168件(17.0%)、解雇・退職強要・契約打切が105件(10.6%)、雇用契約・就業規則が101件(10.2%)となりました。

 労働相談といえば厚生労働省も全国の労基署に設置されている総合労働相談所の相談件数を公表しています。平成28年度で110万件以上の相談と、こちらは桁外れです。そのうち民事上の個別労働紛争に関する相談が25万件以上となっています。

 一旦こじれだしますと裁判まで行く例も珍しくなく、当事務所の集計では年間2万5千件程度が、相談では収まらずになんらかのアクションを起こすに至っています。重篤な状態になる前に、専門家に相談するのがもっともよいとおもいます。

最高裁 正社員と非正規雇用(有期)との賃金格差をめぐり弁論を開く

 正社員と有期雇用の契約社員との手当の格差の違法性が争われた訴訟の上告審弁論が4月23日、最高裁第二小法廷で開かれました。弁論が開かれたのは、運送会社「ハマキョウレックス」(浜松市)で、契約社員として働く男性が、仕事内容や責任の度合いなどが同じ正社員と、手当などで格差があるのは労働契約法20条に違法すると訴えた事件です。背景には同一(価値)労働同一賃金の考え方があります。

 定年後再雇用の賃下げ(同様に正社員と仕事内容や責任の度合いが同じ)が争点となっている「長澤運輸事件」ともども、6月1日に判決を言い渡すとされました。労働契約法20条についての解釈について統一判断が示されることから、実務にも多大な影響を与えるものとなることが予想されます。

障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わります。法定雇用率もUP!

 「障害者が地域の一員として共に暮らし、共に働く」ことを当たり前にするため、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。

 平成30年4月1日から、障害者雇用義務の対象として、これまでの身体障害者、知的障害者に精神障害者が加わりました。障害者の「できること」に目を向け、活躍の場を提供することで、企業にとっても貴重な労働力の確保につながります。また、職場環境を改善することで、他の従業員にとっても安全で働きやすい職場環境が整えられるというメリットもあります。

 民間企業での法定雇用率は、現在2.0%ですが、4月1日からは2.2%となります。「特定求職者雇用開発助成金」など、使いやすい各種支援策もありますので、活用されたらいかがでしょうか。

 

 

新入社員意識調査 男性の79.5% 子供が生まれたときには育休を取得したい

 公益財団法人 日本生産性本部は2017年度の入社後半年後の新入社員を対象としたアンケートを実施し、その結果を公表しました。この調査は、1991年より継続的に行っており、今回が27回目です。

 調査の結果、男性の79.5%が子供が生まれたときには育休を取得したいと答えました。この結果は、2011年に同じ質問をはじめてから過去最高の数字でした。女性は2011年から95%以上でほぼ変わらず、今回は98.2%が「そう思う」と回答しました。

 労働時間については、「残業が多く、仕事を通じて自分のキャリア、専門能力の向上に期待できる職場」と「残業が少なく、平日でも自分の時間を持て趣味などに時間使える職場」とどちらを好むかとの問いには、82.5%が「残業が少ない職場を好む」と回答したそうです。

 調査対象は、日本生産性本部主催の「新入社員教育プログラム等の参加者とのことですので、どちらかというと大企業の社員とおもわれますが、経営者・労務管理担当者として、知っておくべきことかとおもいます。

 

AI時代に求められるスキルは「コミュニケーション力」が最多に

 一般社団法人日本能率協会が実施した第8回ビジネスパーソン1000人調査の結果が1月18日公表されました。今回の調査では、世の中の関心が高まる「AI・ロボット技術」についてが取り上げられました。

 それによりますと、①AI技術が進むことに対して期待している人は約半数。男性のほうが女性より10ポイント以上多い、②AI技術が進むことに不安を感じている人も約半数。こちらは30代、40代の女性が多い、③AI時代にビジネスパーソンに求められるスキル・能力は「コミュニケーション能力」という回答が最多、という結果でした。

 AI時代に限らず、「コミュニケーション能力」とは、いつの時代にも大事なことのように思えます。

部下の残業減らし仕事増 自殺の管理職労災認定 遺族損害賠償求め訴訟

 ホンダの子会社「ホンダカーズ千葉」の販売店の男性店長=当時(48)がうつ病で自殺した件について、千葉労働基準監督署が労災認定したことがわかりました。部下の時間外労働を抑えるために仕事を抱えたことからなどから長時間労働を強いられ、うつ病を発症し、自殺したと認定されました。

 男性は2015年3月、新規オープンする販売店の店長に就任しましたが、部下の時間外労働を抑えるため、仕事を自宅に持ち帰るなどしていました。うつ病になる前は月80時間を超える程度の残業でしたが、新規オープンの準備期間が短く焦りや不安があり、店が赤字になったことも心理的負担になっていたようです。

 ところが会社は、男性がうつ病を発症し通勤できなくなったことから懲戒解雇しました。この解雇を不当として係争中に自殺したものです。男性の遺族は損害賠償を求めて訴訟をおこしています。

 従業員が精神疾患を患った場合、ましてや労災認定される程度に仕事が原因である場合、会社は慎重な対応が求められることはいうまでもありません。ましてや懲戒解雇などは会社の取るべき対応のうち最悪なものでしょう。従業員の生命・健康は会社の宝であると諭した判例もあります。

パナソニック「時間制正社員」導入 介護事業で業界初

 パナソニックの全額出資子会社で介護事業を展開する「パナソニックエイジフリー」(大阪市門真市)は11月22日、1年以上勤務したパートタイマーの介護職員を対象に「時間制正社員制度」を導入すると発表しました。いままでも勤務時間を選択できる制度はありましたが、その部分は変えず、通常の正社員と時間当たりの賃金を同水準にする仕組みです。人手不足が深刻化する中、優秀な人材を確保するのが狙いです。

 いわゆる「短時間正社員」ですが、ヨーロッパ、なかでもオランダなどでは普及している制度ですが、日本では「業界初」といわれています。時間制正社員制度を利用すると、無期雇用契約となり、能力や経験、勤務時間に応じた昇給があるほか、正社員と同じ福利厚生施設を利用でき、退職金も支払われます。現在の正社員が時間制正社員を選択することもできます。

東京労働局 労働基準関係法令違反の現状と司法処理状況をまとめる

 東京労働局は、平成28年の定期監督等の実施結果と平成28年度の司法処理状況をまとめ、公表しました。それによりますと、定期監督等(労働基準監督官が会社に立ち入り検査すること)の件数は9705件となり、前年に比べて834件増加しました。

 法違反の件数と違反率については、労働時間に関するものが最も多く、2433件で、全体の25.1%で違反が見られました。ついで割増賃金(いわゆる残業代)に関するものが2011件みられました。今年7月の最高裁の判決を受けて出された通達では、今後残業代固定払い(あらかじめ定額で残業代を支払うこと)がされている場合、基本給等と区別されてない場合は、指導・監督の対象とするとされましたので、注意が必要です。

 司法処理(検察庁への書類送検)の状況については、合計50件でした。違反事項別では、賃金不払いに関するものが13件と全体の26%を占め最多でした。書類送検はもとより、是正勧告もされることのないよう、日頃の点検・対応が重要になります。

 

厚生労働省 「職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請」を実施

 厚生労働省は、平成29年の労働災害による死亡者数(1~8月の速報値)が対前年比で増加し、とくに8月に急増したことを受け、9月22日、労働災害防止団体や関係事業者団体に対し、職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請をおこないました。20日に公表した本年中の労働災害による死亡者数は、対前年比9.6%(49人)の増加。8月単月でみると、死亡者数は66人、対前年比57.1%と大幅な増加となっています。とくに死亡者が増加している業種としては、建設業、陸上貨物運送業、林業、製造業があげられています。

 労働災害による死亡事故が起きますと、まず、警察による捜査があり、業務上過失致死の疑いがあれば立件(書類送検)されます。また、労働基準監督官による捜査もあり、労働安全衛生法上の違反があれば同様に立件(書類送検)されます。それらを受けた検察官による捜査も1年くらいは続くのが普通です。残された遺族への対応も誤ると大きな問題(損害賠償請求)へと発展することも考えられます。とくに初動対応は大変重要であり、経験のある社会保険労務士に相談することをお勧めします。