定年後再雇用者の賃金格差訴訟で最高裁判決  長澤運輸事件等

 定年後再雇用された労働者が、同じ仕事で責任等も変わらないのに賃金だけ低下するのは労働契約法20条に違反すると会社を訴えた事件で、最高裁が判決を言い渡しました。判決では労働契約法20条の「その他の事情」を幅広く解釈し、定年後再雇用者については一定程度の賃金(基本給等)の低下や賞与不支給は違法ではないとしました。しかし、各種の手当については手当の項目ごとに判断し、精勤手当については、その性質上、再雇用者だから支給しないことは不合理であり違法だと判断しました。

 定年後再雇用者については、仕事の内容や責任の範囲が変わらなくとも、賃金を定年前の60%程度にしている企業が多いことから、この判決の内容によっては大きな改革を迫られる可能性があったことから、大変注目されていました。ひとまずはほっとされた経営者も多いのではないでしょうか。

 ただ、注意しておかなければならないのは、長澤運輸の場合、賃金の低下といってもおおむね80%を維持しており、60代前半の老齢厚生年金の支給時期にあわせて、年金が支給されるまでは別手当を追加支給するなど、細かな対応を会社がしてきたことも判決に影響したのではないかと考えます。各種手当については、直ちに確認し、必要なら是正することが必要とおもわれます。